【徳之島】珈琲の森を目指して
国産珈琲を栽培している徳之島「宮出珈琲園」に訪れた香りと旅して編集部。暮らしの中で感じる「珈琲の香り」の原点を探ります。
珈琲の木の下で
宮出さんに連れられて向かった先は、珈琲の栽培地。
約2,500本の珈琲の木を4ヵ所に分けて育てているそう。入り口付近に車を停めると、宮出さんたちは慣れた様子でずんずん奥へと歩いて行きます。
こんな奥に珈琲の畑があるのか…?
置いていかれないよう一生懸命あとを追います。
道が消え、足元には膝丈くらいまで伸びた雑草たちが生茂る敷地に到着。
すると、
「ようこそ!宮出珈琲園へ。」宮出さんは私たちを歓迎してくれました。
すると、スタッフさんたちは四方八方に進み、あっという間に姿が見えなくなっていきました。
一体どれが珈琲の木なのだろう。
キョロキョロと戸惑っていると、
「これこれ。目の前にあるのが珈琲の木だよ。この奥にもずっと広がっているんだよ。」
と教えてくれました。
「珈琲 栽培」と検索して出てくる画像といえば、”きれいに整備された土地で、1本1本間隔を開けながら手塩にかけて栽培されている”様子ばかり。
ですが、ここでは珈琲の木が森と化しています。
「ここは、育苗(いくびょう)といって苗を育てる場所なんだ。種が自然に落ちると、子どもが生えてくる仕組み。その中から順調に育つ強い子をポットに移して育てていくんだ。」
珈琲の木を、我が子のように愛でる宮出さん。
奥に目をやると、ポットに移された子どもたちがきれいに陳列されています。
春には、奄美大島に旅立っていくそう。
「収穫は全部手作業でやっているんだ。」
そう言うと、宮出さんは次々に珈琲の実を収穫しはじめました。
一粒の果実をニュッと押すと、中から「珈琲豆」が出現!
あぁー。初めて見た〜!
思っていたよりもやや大きく、淡い黄色みを帯びている豆。
「本当は、毎年この時期鈴なりなんだけど、今年は裏年、木が休んでいるね。15年やっててこんなに実がつかないのははじめてだよ。」
それでも手の中には、立派に育った綺麗な赤い果実。
「きっと、2〜3月の日照不足が原因かな。逆に花芽がたくさん付いているから、今年の5月には花がいっぱい咲くだろうね。白い花で上品なジャスミンのような香りがふわ〜っと広がるんだよ。来年は豊作かもしれない。」
「季節遅れのお花見、”コーヒーブロッサムパーティー”を開催しても面白いだろうね。珈琲の花を眺めながら、珈琲を飲む。
香りが本当にいいから、花と一緒に小豆を炊いた”花ぜんざい”がすごく美味しいんだよ。それで作ったおはぎは過去最高に美味しかったね。」
珈琲は、天然酵母を取り出せばパンも作れるそう。その他、製菓材料にもなるから可能性はまだまだたくさんあるといいます。
話している間にも宮出さんは、次々に珈琲の果実を収穫していきます。
宮出さんの想像力は無限大だ…。
ワクワクしながらお話を聞いていると、
「僕はね、実はこっちの世界の方が好きなんだ。」
そういって宮出さんは、珈琲の木の下へするりと潜り込んでいきました。
慌てて後を追って潜入する編集部。カメラ担当も機材を抱えながらなんとか潜入成功。
「子どもたちが遊びに来たらよくこの中に入っててね。大人になるとなかなか木の下に入ることなんてないでしょう。こういう感覚を忘れずにいたいんだ。」
上を見上げると、葉の隙間から日差しが見え隠れし、サワサワと風が通り抜ける静かな世界。聞こえるのは鳥たちの声だけ。
「最近は肥料をあげていない珈琲の木もあるんだ。木が落とした葉っぱが良い栄養になっている。ここだけで循環しているから、あまり農業をしている感覚ではないかな。」
珈琲の木を抜けると、スタッフさんたちも果実を摘んで戻ってきました。
みなさんさすが。手の中には、鮮やかな赤い果実がキラキラと輝いています。
帰りがけ、宮出さんが道脇の木に手を伸ばしスタッフさんに
「それ、人数分取ってみて!」
と促します。
何かと思って見せてもらうと、なんと野生化していた「ビワの実」。
天然のおやつでしばし休憩。
幼少期に家族で野山へと遊びにいった時、父もこうやって山菜を採って名前を教えてくれたことを思い出しました。確か、ビワも食べたような…。
今となっては、とても心に残っている貴重な体験だったんだな〜としみじみ。
ちょっと寄り道
次なる場所へと移動する途中、他のスタッフさんがお手伝いしているという”じゃがいも畑”に遊びに行くことに。
「こんにちは〜!お邪魔します!」
農家さんを訪れると、午前のお仕事を終えたみなさんはお昼休憩していました。
宮出珈琲園のスタッフさんと農家さん約10名で、広大な畑でじゃがいもの収穫作業真っ最中。畑にはじゃがいもがゴロゴロと転がっており、暖かな土の匂いがほのかに漂っています。
農家さんにも”徳之島の香り”をお伺いすると、
「ハナモモの香りは、今だけかも。濃いピンクの花で見てても可愛いよ。」と教えてくれました。
「あとは、うちの牛小屋の牛糞の香りかな(笑)
牛糞の中にいる菌が、人間の体内に入るとアトピー性皮膚炎が治るという話もあるみたいだよ。自分の息子もずっと牛小屋で遊ばせてたらひどいアトピーが治ったよ!」
※病理学分野では、実際に研究も行われているそうです。気になる方は是非調べてみてください。
へ〜!知らなかった!
闘牛が盛んな徳之島は、あちらこちらに牛小屋があるそうです。
どこかで香り、感じられるかな、、。
島のあたたかさに触れられた心地良い時間となりました。
お忙しいところ、ありがとうございました!
前編「珈琲と寄り道の途中で」記事へ
後編「ようこそ!フィットンチットンの森へ」記事へ