香りと旅して

香り

香りと記憶のフシギな関係

街中でふと嗅いだ香りによって昔の記憶がよみがえる…皆さんも一度はそんな経験があるかもしれません。今回はそんな「香りと記憶」の不思議な関係を紐解き、その効果を利用した活用方法もご紹介します。

1.過去のできごとを瞬時に思い出す「嗅覚」

花屋で甘い香りを嗅ぐと子ども時代の草花遊びを思い出したり、街ですれ違った人の煙草の匂いで父親のことを思い出したり、皆さんも匂いによって過去の出来事を思い出した経験はありませんか?
最近では香水の香りで昔の彼女のことを思い出すという歌も流行りましたね。

この嗅覚と記憶の関係は「プルースト効果」と呼ばれ、フランスの作家マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』という小説の「マドレーヌの香りを嗅ぐと幼少時代を思い出す」という場面がその名の由来となっています。

それではなぜこんなにも匂いと記憶が密接につながっているのでしょうか。それには嗅覚と脳の関係にヒントが隠されています。

2.嗅覚と脳の密接な関係

匂いを感じる「嗅覚」は人の五感の中で唯一、思考や理性を司る大脳新皮質(だいのうしんひしつ)という場所を通さず、喜怒哀楽といった感情や本能的な行動を司る大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)と直接つながっています。

その大脳辺縁系には海馬(かいば)という記憶の保管場所のような器官があり、匂いを察知するとそれに関連づけられた過去の記憶やその時の感情などが瞬時に呼び起こされるという仕組みになっています。

つまり嗅覚は脳との神経回路の構造によって、何の匂いかを考えるよりも前に記憶や感情が瞬時に刺激されて、香りを嗅ぐ→その香りをつけていた人の顔やその時の感情が思い出される、といった現象が起こるのです。

昔から人間は、自分たちの生命を守るためにいち早く周囲の危険を察知することが必要不可欠でした。
暗闇の中でも獣の匂いに気付いて危険を回避したり、食べ物の腐敗具合を判断したり、生きていく上で重要な役割を果たしていた「嗅覚」は、その他の五感、視覚(見る)、聴覚(聴く)・触覚(皮膚で感じる)、味覚(味わう)に比べて、もっとも原始的かつ本能的な感覚とも言われています。

小さな子どもが母親の匂いのするものを手元に置いて安心感を得るといったことも、本能的に嗅覚と記憶が結びつけられている現象と言えます。

3.香りと記憶の活用方法

香水で記憶に残る人に

香りと記憶の効果を、恋愛に活かすこともできます。
前出の歌の話しにもありましたが、特定の香水をつけて好きな人に会うことで、離れていてもその香水の香りを嗅ぐたびに自分のことを思い出してもらえるといったことが期待できます。

また、フローラルな香りで優しい印象に、シトラス系の香りで爽やかに、などつける香りの種類によって自分のイメージを相手に印象付けることもできます。
まずは香りをたくさん試して、自分の好きな香り、纏いたいと思える香りと出会うことから始めてみましょう。
「わたしの香り」があるという、その特別感だけでも気分よく過ごすことができそうですね。

おうちの香りで外でもリラックス

続いては、出張や外出など外に出る機会が多い方におすすめしたい香りの活用方法です。
毎日忙しく働く女性にとって、お家で過ごすリラックスタイムはとっても大切。
まずはそんな自分のリラックス空間に、お気に入りの香りをプラスしてみてください。
香りの代表格「アロマオイル」にはたくさんの種類・効果があり、使用シーン別にブレンドされたものもあります。
また、アロマの香りを拡散させるアイテムもさまざま。アロマディフューザーやアロマストーンなど、自分のライフスタイルに合ったものを探してみましょう。

お気に入りの香りを「おうちの香り」として定着させたら、外出時にその香りを持ち歩いてみてください。
ハンカチやティッシュに染み込ませれば、出先でも気軽に香りを使うことができます。(色移りには気をつけてくださいね)
自分がリラックスできる状態(空間)と、その香りをセットで記憶しておくことで、普段行き慣れない場所でもおうちの中にいるようなゆったりした気持ちで過ごせるかもしれません。

いかがでしたか?
普段何気なく感じていた「香り」と「記憶」の関係性。
ぜひその効果を利用して生活に役立ててみてくださいね。

参考サイト:
日本医師会
東京大学大学院農学生命科学研究科 生物化学研究室

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