【石川県】森とともに生きる香りづくり
石川県・白山麓のアロマ蒸留所「アースリング」さんを訪ねた “香り旅”。
蒸留技師の大本さんに、香りづくりへの想いを伺います。
香りづくりのきっかけは、子どもの頃の山遊び
大本さんが植物や香りに興味を持ったのは、お父様の影響が大きかったといいます。
「子どもの頃、よく父に連れられて山に行っていましたね。
父と一緒に野草やハーブを採ってその味を試してみたり、水筒に入れたらこんなふうに飲めるよとか。自然の楽しみ方を教えてもらいました。」
他にもキャンプや海遊びなど、自然に触れることが多かったという大本さん。
その後、植物療法やアロマテラピーという言葉に、ご自身の幼少期の経験と通じるものを感じ、この業界に入ることを決めたのだそう。
しばらく東京や他県で香りのお仕事をされていたそうですが、東日本大震災を機に地元への想いが強まり、石川県に戻ることを決意。
しかし、当時はアロマ作りというものに対して、地元の人からはなかなか理解されなかったと言います。
「人間の家を建てるのに必要な木材も、製材の過程でその多くが捨てられているのが現状です。
うちではその捨てられてしまう部位を製材所から購入して、精油づくりをしています。
今回蒸留していたスギの葉も、林業を引退したおじいちゃんやおばあちゃんたちに、山から拾ってきてもらってきたもの。
それまでは落ちて、朽ちて、山の土になっていただけの葉っぱだったので、おじいちゃんたちも「これが香りに?」と半信半疑でした。
けれど、葉っぱを集めてくることが、地域の人の仕事になったり、その人のやりがいになったり。
そうしていくことで、次第に地域とのつながりも生まれていきましたね。
その他にも、自然の魅力や植物の良さを発信したり、SDGsやサステナブルといった言葉も追い風になって、メディアにも取り上げられたりして。
次第に周りからの理解も得られるようになりました。」
自然とともに生きる
自然の恵みや資源の循環、人とのつながりを大事にしたものづくりを続けている大本さん。
「自然とともに生きること」がポリシーだといいます。
「僕たちが香りをつくりたいために森があるんじゃない。
森の中に使われていないものがあるから、それを有効活用して香りづくりをしているんです。」
「香りを抽出した後の葉や枝も、そのまま捨てることはしません。
乾燥させて、燃やして、灰の状態にするんです。
灰は土壌改良に適していていて、ハーブ園のガーデナーさんたちが土作りに利用しています。
そこで育ったハーブたちが、また香りづくりにつながっている。
そういった循環や、人とのつながりを持てるところが、僕のやりがいですね。」
これからも山の魅力を伝えていきたい
最後に、今後挑戦したいと思っていることや目標を伺いました。
「2021年には地域の人やアーティストと共同で、2日間限定の森のレストラン “ QINO Restaurant ” を開催しました。
地域の食材や、蒸留所の香りを使ったフルコースを提供して、山の中で特別な時間を過ごしていただきました。」
「今後も山の魅力をもっと発信していきたいなと思っています。
山に還る。自然に還る。
そんなことを体験できるようなプログラムを現在構想中です。」
香りづくりだけでなく、さまざまなフィールドに活動の場を広げている大本さん。
「仕事」としてだけではなく、「生き方」そのものに明確な指針があり、またなにより楽しみながら物事に取り組んでいる姿が印象的でした。
普段わたしたちが使っている精油一つにも、その裏側にはものをつくる人の想いがこんなにも広がっているとは。
「知る」ことで、物事に対しての自分の気持ちの変化も面白いもの。
思わず、毎週出している家のゴミ袋たちが脳裏に浮かび、「生ゴミのコンポストとかやってみようかな…」などと意識が高まったりして。(やるかどうかは置いといて。)
取材という仕事の面白さも知ることができた、今回の “香り旅”。
次はどんな出会いが待っているのでしょうか。
大本さん、今後のご活躍も楽しみにしています。
ありがとうございました!
白山麓のアロマ蒸留所 アースリング
住所/920-2335石川県白山市女原甲58 ミントレイノ内
電話/076-275-7810
HP