香りと旅して

香り

日本の三大香木で四季を感じよう

日本は春夏秋冬の四季を楽しめる国。季節ごとの景色や空気、情緒を味わうことができます。
四季によって花を咲かせる植物も様々。日本の風土によって育まれた香り高い植物を「三大香木」または「四大高木」と呼びます。今回は、その植物を詳しくご紹介します。

1.三大香木・四大香木

春の「沈丁花(ジンチョウゲ)」

沈丁花(ジンチョウゲ)は、ジンチョウゲ科の常緑低木で、日本の春を代表する植物です。
4月になると、桃色の縁取りをした白色の小さな花が咲き、見た目だけでなく、上品な甘い香りでわたしたちに春の訪れを感じさせてくれます。

沈丁花の香りは香料としても人気が高く、多くのブランドで香水などに使用されています。
花や根には、強い毒性の成分が含まれているため、天然の精油として安定して抽出することは難しく、市場では人工的に再現された香料が使用されています。
沈丁花そのものの香りを楽しみたいという方は、春先に公園へ足を運んでみてくださいね。

|沈丁花の花言葉:「栄光」「勝利」

夏の「梔子(クチナシ)」

徐々に蒸し暑くなり始める6月頃から美しい白い花を咲かせる梔子(クチナシ)。甘さとスパイシーさを感じる香りで、夏の訪れを教えてくれます。
厚みのある花びらが5枚ついた一重のものをよく見かけますが、中にはバラのように咲く八重咲きのものもあります。

山吹の 花色衣 主や誰 問へど答へず くちなしにして
意味)山吹の花の色の衣よ、「主は誰か」と問いても答えない。口無し(クチナシ)という名の実で染めたからだろうか。

古今和歌集に収められているこの和歌は、「口無し」と「クチナシ」をかけた洒落をきかせた歌。クチナシの実は、熟しても皮(口)が開かない様子もなぞらえているため、ユーモアのある和歌として知られています。

春の沈丁花同様、有名ブランドから梔子の香りの香水が出るほど、人気のある香りです。
しかし、花から香りの精油成分はほとんど抽出されないので、人工香料が使われています。

|梔子の花言葉:「とても幸せです」「優雅」

秋の「金木犀(キンモクセイ)」

金木犀の香りが漂ってくると、いよいよ秋本番と感じる方も多いのではないでしょうか。
夏の暑さが引き、涼やかな風が吹き始める9月下旬〜10月上旬頃に、橙色の小さな花が咲き誇り、強い甘みのある香りを届けてくれます。

金木犀の香りは、天然香料としても広く使用されています。日本では、可憐な花と心地よい香りから、庭木としても親しまれています。
開花時期が短いので、季節の変わり目には街路樹などを注意深く見ていきたいですね。

|金木犀の花言葉:「謙虚」「初恋」「気高い人」

冬の「蝋梅(ロウバイ)」

これまでご紹介した3種は「三大香木」として広く知られていますが、冬にも忘れてはならない香木「蝋梅(ロウバイ)」があります。この蝋梅を含めた香木のことを「四大香木」と呼び、古くから日本で親しまれてきました。

蝋梅は、その名前から梅のような香りがすると思われがちですが、酸味のある香りではなく、甘い優しい香りが漂います。
冬の澄み切った空気の中に漂う蝋梅のほのかな甘い香りは、わたしたちの心をホッと温めてくれるよう。その香り立ちの良さは庭木としてだけでなく、室内で楽しむ香りとしても愛されています。

また、蝋梅の香りは香水の成分としても用いられ、冬にぴったりの落ち着いた雰囲気を演出します。

|蝋梅の花言葉:「慈愛」

2.香木とわたしたちの暮らし

香木は、古来からわたしたち日本人の暮らしに深く馴染みのある植物です。
原産国のほとんどは中国ですが、奈良時代〜江戸時代には日本に伝来していたとされ、日本でも長い歴史を持っています。

「三大香木」として一般的に広く知られるようになったのは、これらの植物が日本の四季の風物詩として、文学や芸術に頻繁に登場するようになり、人々の生活に密接に関わるようになったからと言われています。それぞれの香りの良さや美しさが評価されて、日本の自然や文化を象徴するものとなりました。
沈丁花、梔子、金木犀は、古来から香袋やお香の原料として用いられてきました。
梔子は花や実を乾燥させると、黄色の色素を抽出することができます。その鮮やかな色味は天然の着色料として活用されていて、おせち料理の栗きんとんや、草木染にもこの梔子が使われたりしているそう。

また、金木犀は、お部屋に香りを広げるフレグランスの他、お茶の香り付けや、化粧水、香水、ポプリ、ジャムなどさまざまな用途で楽しまれています。

今回は、季節の訪れを感じさせてくれる「三大香木・四大香木」の魅力をご紹介しました。
それぞれの花の香りはとても個性的で、わたしたちの記憶に深く残るものばかり。
お気に入りの香りを見つけて、季節の移ろいを楽しんでみてくださいね。

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