香りと旅して

社員コラム

五感で味わう「情熱の国」出張紀行

この度は商品開発のインプット目的の出張として、企画部の6名で訪れたスペインでの旅をご紹介したいと思います。

不安と緊張の中、いざ出発!

こんにちは。最近はもっぱら室内にいるアウトドア好きのMです。
入社して1年半、初めての出張、しかも海外という貴重な体験。
さらに初めて踏み入れるヨーロッパへの緊張感と、やり残した業務がないかという不安感に襲われながら、予約や下調べで前日もほとんど眠れないまま羽田空港へ。
商談や展示会視察といった明確な目的のない分、この数日間が意義のあるものになるかは”自身の着眼点と感性”次第というかなりプレッシャーのかかった出張でした。

趣味であるスポーツ観戦と、専攻していた科目から海外文化への興味は強く、大学生活の長期休みのほとんどは少ないバイト代を費やし、ひとりで海外旅行へ訪れていたりもしていたので、海外に行くこと自体はとても楽しみでした。

そういった話を口走ってしまったばかりに、今回の出張の「なんちゃって通訳係」に任命された次第です。より一層のプレッシャーが僕にのしかかってきました。

個人ではおそらく5年以上ぶりとなる羽田空港でしたが、以前にニュースで見た新型コロナウイルスの影響で閑散とした面影はなく、以前と変わらぬ賑わいで、様々な国籍の人たちが見られました。

空いた時間には欠かさずインバウンド向け商品を調査。商品開発の人間として、どういった商品に需要があるかを間近で知れるチャンスです。
愛想のいい入国審査を抜け、見慣れた言語に案内され、なんの問題もなくスムーズに搭乗。日本発の便は日本人が多いので安心です。

機内はとてもリラックスできる環境ですが、座り姿勢で眠れない体質なので睡眠は諦めて、普段なかなか時間をとれない読書や映画鑑賞を繰り返しているうちに、あっという間にドイツ・ミュンヘン空港。
この空港にて2時間ほどのトランジット。

せっかくならドイツの食事も体験しようとカフェをのぞいたら、何の変哲もないサンドウィッチが€10(約¥1500)。
もしかしたら見た目以外の何か変哲があるのかもしれませんが、残念ながら断念することに。

なんとなく聞いていたヨーロッパの物価の高さに、今後の旅がさらに不安になっていました。
(あとになって振り返ってみると空港だから少し割高だっただけみたいです。)

土産店で見かけた面白いパッケージ。中身はなんと“カクテル“でした。

2時間のフライトで、ついにスペイン・バルセロナ空港へ到着!
初日の空港からホテルまでの送迎だけ現地の日本人の方にお願いしていた甲斐もあり、安心かつスムーズにチェックイン!

(本当はずっと付いていてほしかった、、、)

ひとまず無事にたどり着けた安心感で吸い込まれるようにホテルのベッドへ。
明日に備えます。

建築家 ガウディの作品に触れる

二日目はバルセロナで、世界遺産「アントニ・ガウディの作品群」を巡ります。
12時間のフライトの疲れを完全にはとりきれないまま、早朝にホテルを出発。

海外という不安感がまだ残っていたので、時間に余裕をもって動きます。

まずは「グエル公園」。
せっかくの海外出張なので時間の許す限り予定を詰めこんだこともあり、朝早くからグエル公園の入場を予約していました。

“グエル公園は入り口が3つありそこまでの道も入り組んでいるので、タクシーをオススメします。”

そう紹介してくれていた優しい旅ブロガーのご厚意をよそに、Googleマップがあるからいけるでしょう。と徒歩を選択したことにより、まんまと遠回りで意図しない市街観光をしながら集合時間ギリギリに到着。
(実際に経験してみた結果やはり、タクシーをオススメします。)

公園とはいえ世界遺産なので、チケットの確認を念入りにされなんとか入場!
アントニ・ガウディといえば、自然から着想を得た有機的な曲線に散りばめられたカラフルな装飾が印象的ですが、思ったよりもその範囲が広く、園内のいろいろなところにタイル模様を確認。

市場や学校など、いくつもの建築物でできた小さな町を設計しようとしたところから始まったそうですが居住者が現れず公園として開放。そして世界遺産に登録され今の形へ。という流れらしいです。

天候にも恵まれ、大勢の人がいる中での見学でしたが、見るもの全てが新鮮でとても楽しめました。

ひと息つく暇もなく次の場所へ移動。

グエル公園からタクシーで5分ほどのところにある、今回のスペインの旅の一番の見どころ、「サグラダ・ファミリア」です!

まずはその大きさと異様な雰囲気に圧倒されます。
今までに見たどの建造物とも似つかない形状で、近づくとかなり細部まで装飾が施されているのがわかります。

そして情報としては理解していたことですが、当然未だ「建設中」のため敷地内には大型トラックが出入りし、工事の音が鳴り響いています。
油断すると外壁の彫刻に見入ってしまい、時間を忘れてしまうので主観と客観をうまく使い分けながら見学していきます。

生誕のファサード。
キリストの誕生から初めての説教までを表現。ガウディが生前に手掛けたこともあり歴史を感じられる作り。

受難のファサード。
こちらはシンプルな彫刻で最後の晩餐から昇天までの苦悩と悲しみがテーマ。

色彩豊かなステンドグラス。晴れた日中でしか味わえない

塔をまわるツアーではまさに建設中の部分を間近に、バルセロナの街をキリスト目線で見渡せます。
事前情報でこの建物に込めた思いや宗教的背景などもリサーチしてから見学するとより楽しめます。
今回見学したのは昼間でしたが夜間もライトアップされていて、また違った表情を楽しめるそうです。

時間をかけようと思えばいくらでも見続けられますが、次の予定もあるのでしっかりと目とスマホに焼き付けながらサグラダファミリアをあとにします。

よりディープな「ガウディ」

つづいて訪れたのは、「カサ・ミラ」。
ミラ夫妻の邸宅としてガウディ設計したものですが、その芸術性からのちにバルセロナの代表的な建造物となっています。

その奇抜な造形であるため実用性はないと当時は批判をうけたそう。実際に中を見学すると家具などが展示してあるけれど、やはり住みやすくはなさそうでした。

内も外も直線がまったくない独特な形状
内部の一角が資料館になっている

彼の作品はグエル公園で見たカラフルで独創的な装飾の側面だけがフォーカスされやすいですが、そのどこか感覚的なイメージに反して、実は緻密に計算されて作られたことがわかります。

自然科学をもとにしたとされるガウディ独自の構造力学がどのように利用されているのか、彼が建築家としてどういったところにこだわっていたのか、資料館ではそういった側面に触れることで、素晴らしい造形をより理解して楽しむことができます。

屋上にはローマ兵士の頭に兜をかぶったイメージで造られた煙突があり、バルセロナを一望できます。

街中に忽然と姿を現すアート作品

日本ではなかなか見られない遊び心。ただの町歩きでも日本では味わえないワクワクと出会えます。

本場の味はいかに

市街を観光しながら夕飯探しをします。
今回の出張で楽しみにしていたことのひとつ「スペイン料理」。
特徴としては、「素材そのものを生かし、加工はあまりしない。オリーブオイル、ニンニクをベースにハーブ、スパイスを使ったシンプルな料理」とのこと。

日本でも聞き馴染みのあるパエリアなど、代表的な料理のほかにも地元でとれる海産物を生かした料理が数多くあります。

ホテルから近い場所に飲食店で囲まれた広場があるらしいので、行ってみることにしました。
そして行き着いたスペイン滞在最初の晩餐は「Les Quinze Nits(ラス・キニーゼ・ニッツ)」というお店。
石畳に白いテーブルクロス、綺麗に正装しているウエイター、漂うシーフードの香ばしい香り。
いかにも想像していたヨーロッパのレストランのテラス席といった感じです。

日照時間の長さからなのか、そこに住む人々の陽気さからなのか、はたまたその両方なのか夜の21時と思えない明るい景色でのディナー開始でした。

レストランがある「王の広場」。撮影時はまさかの20:35。
せっかくなので(勤務時間も過ぎたことを確認し… )スペイン発祥のワインカクテル「サングリア」をいただくことに。

さすが本場。
フルーツの香りもとても強く、しかし料理と合わせると決して邪魔しない爽やかな甘さでとても飲みやすかったです。日本の大衆居酒屋のものとはまったく別の飲み物でした。

こちらは野菜がたくさんのスペインの冷製スープ「ガスパチョ」と「小海老のフリット」。

ガスパチョは、日本でも飲んだことはありましたが、本場はニンニクの香りがとても強い!しかし爽やかでスッキリとした味わい。慣れない土地と時差ボケとで疲れ気味の身体に染み渡っていく感覚。

小海老もサクサクとした食感と凝縮された海の旨味、添えてあるライムがちょうどいい酸味でお酒との相性抜群でした。
そしてなんといってもスペインの代表料理「パエリア」。
オーソドックスなシーフードパエリアとイカスミのパエリアを注文してみました。

海の香りと出汁をしっかり吸った固めのお米と、新鮮でクセのない味の魚介類、どれもこれも大変美味でした。
大満足で2日目を終えます。

天才・ダリを生んだ街「フィゲラス」をめぐる

スペイン3日目となる今日。
ホテルの豪勢な朝食ビュッフェをしっかりと満喫した後、カタルーニャ地方のある街を目指します。

特急電車に揺られること約1時間。たどり着いたのは「フィゲラス ヴィラファント」。
あの有名なサルバドール・ダリの出生地であり、これから向かう記念美術館も本人の意志で生まれ育ったこのフィゲラスに建てたそう。

個人的に面白かった、列車が改札のはるか手前で停まり改札まで歩いているところ

訪れる人の9割近くがこの美術館を目的に駅を利用するそうですが、びっくりするくらい駅周りには何もなく、高い建物のない広い空は事前の雨予報が嘘のような雲ひとつない快晴に。

日陰の少ないロータリーで体力を奪われます。

美術館までのスケジュールを町歩きに設定してしまったことに若干の不安を抱きながら、比較的人相の良さそうな運転手のタクシーを拾っていざ美術館へ。

近づくにつれ辺りに建物も増え、鮮やかな街並みに人影も見えてきました。10分ほど乗ったあたりで心の雲も晴れ、あっという間にフィゲラスの街へ到着。

カラフルな建物も数多く見える中、圧倒的に怪しげな建物を発見。

美術館の場所を完全に把握した状態で街ブラ開始!
の前に、スペインの名物「チュロス」と「ホットチョコレート」でエネルギーをチャージします!

揚げたてのチュロスは日本のような甘さはほとんどなく、少し塩味すら感じるほど。同時に頼んだ少しビターなホットチョコレートにつけてみると、見た目より大人な味わい。
時間的には昼食を食べてもいい時間でしたが、朝食バイキングで本気を出しすぎたせいか、チュロス2つほどでちょうどよかったです。

街はというと、駅周りの殺風景が嘘のようで、食品、雑貨、衣服、化粧品と幅広く、そしてある程度年季の入った店の外観がなんともオシャレで多くの人で賑わっていました。

お菓子やパンを扱うお店も多く、香ばしい匂いが街全体にしていたのでお腹を空かせてくればよかったです。
そうこうしているうちに予約の時間を迎え、目的の場所に。

いざ天才の頭の中へ!

こちらが目的の「ダリ劇場美術館」。まず外見から他の美術館と一線を画すフォルムです。

建物の上にはマネキンと巨大な卵

一般人には到底理解できないモチーフの装飾品の数々。このフィゲラスでは有名なパン「クロストン」が無数に並んでいます。

ダリといえばあの特徴的な時計の絵が有名ですが、もちろんそれ以外にもたくさんの作品を残していて、それらが所狭しと並んでいます。

入場してすぐ目に入る中庭の巨大アート「エステル女王」
ニューヨークメトロポリタン歌劇場で上演された「迷宮」の舞台背景を拡大し描きなおしたもの

年代によっては同じような岩を積み重ねた人の絵を何枚も描いていて、一つのことを自分の納得のいくまでこだわり続けていたダリの人間性をも伺い知ることができます。

ある一定の場所から見ると部屋のレイアウトが人の顔のようにみえるという作品
二つの目それぞれから見える景色をそれぞれ描いたという作品

作品数も多く、他の美術館にはないようなアトラクションや仕掛けもあるので、予定していた所要時間(約2時間)もあっという間。まさに美術館そのものが彼の作品として楽しめるものとなっていました。

駅に到着した時はどうなることかと思っていましたが、結果的に時間が足りないほど大満喫!帰りの特急電車も予約していたので、名残を惜しみながらもフィゲラスを発つことに。

ここでちょっとしたトラブル発生。

先ほどまで雲ひとつない晴天だった空が一変。3cmほどの雹が降る事態に。

この時期はほとんど雨が降らないという定説をよそに、日本でもなかなか見られない大きさの雹に遭遇。
幸い、ホームに出た当たりで降り始めたので、本格的に濡れることなく乗り込みました。

あと5分遅かったらなかなかの被害が出ていそうな外の景色を車窓から眺め、少し濡れた腕を拭きながらバルセロナへと戻ります。

バルセロナの中心「ランブラス通り」

夕食まで時間があったので、今度はカタルーニャ広場へと続く「ランブラス通り」を街ブラです。
途中で人だかりを発見。

「カナレタスの泉」

地元のサッカーチーム、FCバルセロナが優勝した際に”サポーターが集合する聖地”としても有名な「カナレタスの泉」ですが、「ここの水を飲むとまたバルセロナに戻って来れる」という伝説から、スペイン版トレヴィの泉と呼ばれ観光客で賑わっていました。

私も飲もうと挑戦してみましたが、多くの人が利用するせいなのか4つの蛇口のうち1つは水圧が壊れていたようで、一気に服がびしょ濡れに。

(全身で水を浴びた場合、伝説は適用されるのでしょうか、、、)

暴発の決定的瞬間

次にやってきたのは、通りから少し外れたところにあるオリーブオイル専門店「La Chinata(ラチナータ)」。

スペインが生産量世界No.1を誇るオリーブオイルですが、その中でも特に有名な専門店の一つだそうです。

ここには食用のオリーブオイルが何種類も展開されているだけでなく、オリーブオイルを使った化粧品やボディケア用品なども販売されています。

色々なテイストを味見でき、店員さんのおすすめと気に入った風味をお土産用に数種類購入。特選のオリーブオイルは好きなシリアルナンバーを選ばせてくれました。

それぞれの特徴や調理方法、こだわりなどを店員さんと会話しながら楽しめるいい雰囲気のお店でした。

スペイン最終日の夕食は、現地の日本人がオススメするところへ行く予定でしたが、人気店なのか大行列で断念。
大人数で予約なし・飛び込みとなると入れる店は限られているので、歩きながら呼び込みの店員さんに聞いて決めることに。

そうして行き着いたのが「Taller de Tapas(タラー・デ・タパス)」というお店。
地元の人で賑わうバルでしたが、人気の通りから少し離れていたからか偶然席が空いていてラッキーでした。
バーのようなカウンターと奥にテーブルが何席かあり、趣のある薄暗い店内が料理への期待を煽ります。

海鮮が有名なスペイン料理ですが、これでもかというほど豪快に盛られています。

仔牛のコンフィのポートワイン煮
昨日のお店とはまた違った磯の香りの強いシーフードパエリア

せっかくのバルなので各々好きなお酒を頼むことに。私はウエイターおすすめのワインをいただきました。

とても香りのいい渋みのある味でしたが、料理に合うものを、とお願いしたので同時に口に含むと素晴らしい風味で相性抜群!とても良い締めくくりでスペイン最後の夜を終えたのでした。

最後の最後までスペインを楽しみ尽くす

スペインを発つまでの空港で面白いと思ったものをとりあえずパシャリ。

ただの軽食コーナーですが天井がかなりアーティスティック
フレグランスを売るお店も現品テスターの展示に印象付ける一工夫
和モダンに落とし込んでも需要のありそうな扇子とパッケージ

滞在する最後の瞬間までスペインを堪能しました。

初めての国、初めての海外出張。
ほとんど使えない英語とスペイン語の壁に不安と緊張で迎えた旅でしたが、結果的に現地の人と直接触れ合えて、こちらの意図を汲み取ろうと耳を傾けてくれる人たちの温かさを直に感じられることとなりました。

日本で味わえない、日常の生活を一歩離れた視点から見つめ直す機会と、より開放的な頭で商品を考える時間。
そしてスペインならではの人や空気、芸術や文化、建築物、料理に直接触れられる貴重な経験、すべてが得られた大変有意義な出張となりました。

ぜひともまた機会があれば訪れてみたいですが、カナレタスの泉の水を全身で飲んだのでまたいつか来れると信じて、今回スペインで得られた感性を今後の商品開発に活かして参ります。

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