香りと旅して

香りと旅して

【京都】昔なつかしい日本の夏みかん

今回の香り旅のテーマは “夏みかん”。
日本海に面した京都府舞鶴市では、この夏みかんを守り育てようとする有志の会があり、その活動は着々と広がりを見せています。府内には夏みかんの香りを生産する精油所も。皆さんの夏みかんにかける想いをお届けします。

「夏みかん」とは?

夏みかんは、江戸時代から親しまれてきた日本原産の柑橘で、その名の通り夏に楽しむことができる果物です。
「ナツダイダイ」とも言われていて、昨年の実と今年の実が同時にできる不思議な習性から「代々」と名付けられたそう。子孫繁栄をあらわす縁起の良い果物としても知られています。

これまで日本各地の香りを探してきた編集部は、この「日本原産」と言うワードにビビビッ(古い?)と反応。しかもこの夏みかんの香り(精油)を同じ京都で作っていると言うから、これは取材するしかない!
こうして降り立ったのが今回の舞台、京都府舞鶴市です。

舞鶴市は「海の京都」とも言われていて、城下町として栄えた西側にはレトロな商店街や京都の海の幸が堪能できる海鮮市場があり、東側には海軍ゆかりのスポットや赤れんがパークがあるなど、見どころがたくさんある人気の観光都市です。

街歩きコラムはこちら

こちらの右側にいらっしゃるのは、アトリエ アストルフォンの坂本さん。
坂本さんはデザイナー出身で、地元舞鶴にUターンしてからは、その素敵なセンスで商品開発やパッケージデザインなど、地元を盛り上げる活動をされています。
今回はそんな坂本さんにアテンドを依頼。一緒に舞鶴の「夏みかん」を追っていきますよ!

“キャッチフレーズ” を体感しに神崎浜へ

『潮風育ちの京・夏みかん』と名付けられた、舞鶴の夏みかん。
なんとキャッチーで品のあるネーミング!ハートを射抜かれた私たちは、その “潮風育ち” を体感してみてみたい!と、舞鶴にある神崎浜へとやってきました。

取材に訪れたこの日は薄曇りのお天気でしたが、その美しさは十分!白い砂浜に、透き通った海。静かでゆったりとした浜辺にはヨガを楽しむ人たちの姿もあり、なんとも穏やかな光景が広がっています。
夏には海水浴客で賑わそうで、

「私も子どもの頃は、この神崎浜で遊んだんですよ」

と坂本さん。
柔らかな口調の坂本さんと、穏やかな神崎の海と街並み。なるほど。こんな綺麗な海が近くにあったら、人も果物もおおらかに育ちそう!と妙に納得。
土地の雰囲気というか、その街ならではの空気感って、そこに暮らす人たちにも表れる気がしますよね。

別荘地として人気だったというこのエリア。最近では神崎浜を気に入って移住してきたというサーファーや、中には海外からの移り住んだという方もいるのだそう。ビーチクリーンなどの活動も活発で、地域の方たちに大切にされています。

舞鶴の美しい海を体感できたところで、次はいよいよこの街の “潮風” を受けて育ったという「夏みかん」とご対面!いったいどんな姿をしているのでしょうか。

昔ながらの夏みかんを守り育てる

坂本さんの案内でやってきたのは、神崎浜から程近い、由良という地区。
夏みかん畑で待っていてくれたのは、「舞鶴夏みかんの会」の会長・村上さんです。
村上さんは舞鶴の夏みかんを存続させようと会を発足。苗木を植えたり、地域の特産にしようと活動されている、“舞鶴夏みかん” の立役者なんです。

「わたしらが子どもの頃は、夏みかんに砂糖かけて食べていたよ」

と村上さんは子どもの頃の思い出話もしてくれました。
日本原産の果物として歴史がある夏みかんですが、「酸っぱい」ことも特徴の一つ。海外から甘く美味しい果物が入ってきたり、日本の果物も品種改良が活発になったりと時代も変化。3,500本ほどあった夏みかんの木は、80本ほどにまで減少してしまったそう。
そこを村上さんたち「舞鶴夏みかんの会」の努力によって、現在は250本ほどまで増やすことができたと言います。

村上さん(左)とアトリエ アストルフォンの坂本さん(右)

こちらの畑には40本ほどの夏みかんが植えられていました。背丈は私たちの肩ほどの高さですが、1本1本の木には数え切れないほどのたくさんの実がなっています。
実は片手に余るほど、大振りで立派!まんまるとした愛嬌のある形に、鮮やかな黄色が存在感たっぷりです。

「この畑の夏みかんは、植えてから今年で9年目かな。」

そういうと、村上さんは大きな実を一つ手に取り、私たちに切り分けてくれました。
固く厚みのある皮の中には、粒のしっかりした実がぎゅっと詰まっていて、切った瞬間柑橘特有の爽やかな香りが広がります。

酸っぱい酸っぱいと聞いていたので、断面を見るだけでも奥歯の方で唾液が。覚悟して一口いただいてみると、わ!とっても美味しい!
酸っぱさはあるものの、優しい感じの酸味で、夏に食べたら元気になりそうです。

「美味しいって言ってもらえて、わたしも嬉しいです」

と、村上さんは目を細めて喜んでくれました。

「私は紅茶に入れて飲むのがお気に入りなんです。サラダに入れるのもおすすめですよ」

坂本さんは他にも、夏みかんのジャムもほんのり苦味があって美味しいですよ!など、“夏みかん情報” をたくさん教えてくれました。さすが地元の盛り上げ上手!夏みかんに馴染みの薄かった私たちも、試してみたい!とぐいぐいその魅力に引き込まれます。

村上さんの元で大切に育てられた、元気いっぱいの夏みかんは、毎年全国からネット注文が入り、京都の老舗和菓子屋さんや高級料亭では、料理を美しく彩る<器>として提供しています。

畑以外にも、街のいたる所に夏みかんの木が点在していて、見上げるほどの大木も見られました。夏みかんは品種改良がされていないため木の生命力が強く、中には樹齢100年ほどのものもあるのだとか!
舞鶴の人たちの暮らしのすぐそばに、「夏みかん」はずっと存在していたのですね。

「わたしたちの目的は夏みかんを守り、増やしていくこと。薬を使ったり、摘果(間引き)をしたりして木に負担をかけるんじゃなくて、手間をかけずに自然に任せた栽培をしているんです。」

舞鶴夏みかんの会も今年で10年。着々と根を張っているその活動は、舞鶴の街だけでなく、全国へも広がりを見せています。

村上さん、お忙しい中快く取材に応じてくださいまして、本当にありがとうございました!

舞鶴夏みかんの会
京都府舞鶴市西神崎545-1 竹内酒店内
Facebook

アトリエ アストルフォン
京都府舞鶴市字松陰35番地
HP

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