日本ならではの「季節湯」を楽しもう
日本は世界からみてもお風呂好きの国といわれています。お風呂は身も心も癒してくれる大切な場所。平安時代には治療を目的とした「季節湯」が誕生し、現在でも楽しまれている日本ならではの文化です。
1.日本ならではの「季節湯」とその香り
日本には、端午の節句にあたる5月5日に入る「菖蒲湯」や、12月の冬至の日に入る「柚子湯」など、季節の果実や植物を湯船に入れる入浴法を「季節湯」と呼んでいます。
四季を感じながら浸かるお風呂はリラックスできる他、体に嬉しい効能があるものも。
ここでは春夏秋冬でみた、代表的な季節湯を4つをご紹介します。
2.お風呂で「季節の香り」を感じる
よもぎ湯(3月)
漢方でも多く用いられている蓬(よもぎ)は、日本各地に生息している野草です。
「万能薬草」や「ハーブの女王」とも呼ばれ、その栄養価の高さから草餅や草だんごの材料としても活用されています。また、貧血になりやすい女性に対して効能が期待できます。
よもぎの葉に含まれるエキスには、擦り傷・切り傷の止血や殺菌にも効果がある他、保湿、発汗、解熱作用のある成分も含まれています。
体に嬉しい成分がたくさん含まれている葉っぱを活用した「よもぎ湯」は、血行促進が期待でき、肩こり・腰痛、神経痛などを和らげる働きがあります。
ハーブティーのような心地よいの香りは、ストレス解消や安眠にも良いとされているので、リラックスした気持ちで湯船に浸かってみましょう。
<よもぎ湯のつくり方>
①乾燥したよもぎの葉ひとつかみ分を、ガーゼやお茶パックで包む。
②湯船に入れ優しく揉み出す。または、鍋に入れ、濃く煮出した煮汁を湯船に入れてもOK
よもぎはさまざまな場所で自生していますが、似ている草のなかには毒草もあるため、信頼できるお店を利用して手に入れることをおすすめします。
薄荷湯(8月)
夏前になると、薄荷(はっか)を使った食べ物や雑貨などが店先に並び始めます。
薄荷特有のスーッとした清涼感のある香りは、メントールという成分によるもの。爽やかな香りも相まって、体の熱を逃してくれるイメージをもちますが、実は薄荷には血行促進や保温など体を温める効果があります。
薄荷湯は体を温めますが、入浴後の発汗は少なく、汗がさっと引くので夏のお風呂にはぴったり。夏バテや疲労回復、冷房冷え対策にもおすすめです。
< 薄荷湯のつくり方 >
① 生もしくは陰干ししたミントの葉(約30〜50g)を布袋に入れて、風呂桶に入れる。
② 上から1L程度の熱湯をかけて15〜20分ほど蒸らす。その汁と袋を風呂に入れ、よくかき混ぜてから入浴する。
生の薄荷がない場合は、「薄荷茶」でも代用可能。「薄荷茶」は自然食品店などで入手できますよ。
生姜湯(10月)
季節の変わり目は体調も崩れやすくなります。風邪のひき始めに生姜汁とはちみつを混ぜ合わせた「生姜湯」を飲むことも多いでしょう。
中国ではスープや粥に生姜を入れたり、スウェーデンでは生姜汁+はちみつ入りのビールなども親しまれており、世界でもポピュラーな食材です。
生姜特有の刺激を感じるフレッシュな香りの生姜湯。
血行を促進させ、体を内側からじんわりと温める成分が含まれているため、日に日に寒くなる秋口におすすめの季節湯です。
<生姜湯のつくり方>
①生姜を1〜2かけ分をすりおろし、しぼり汁を浴槽に入れてかき混ぜる。
②さらに薄くスライスした生姜を布袋に入れ、揉みながら入浴すると芳香効果が増します。
※アトピーなど肌の弱い方は少量からお試しください。
柚子湯(12月)
一年で最も昼の時間が短くなる冬至に柚子湯に入ると、『一年中風邪をひかない』という言い伝えがあります。
爽やかな柚子の香り(精油成分)には、血行を促進させる働きがあり、お風呂に入れると体を芯から温めます。新陳代謝も活発になるので冷え性にも効果的。
また、柚子の皮には、リラックス効果や風邪予防が期待できる成分も多く含まれています。柚子湯は、日ごとに厳しくなっていく寒さに備えるための冬の風物詩です。
<柚子湯のつくり方>
①実の状態のまま、食塩でゆずの皮をしっかりと擦り、流水で洗い流す。
②丸ごと2〜3個お風呂に浮かべる。
実が潰れて種が出るのが心配、という方は、ネットなどに予め入れておくと後処理も楽にできます。
いかがでしたか。
お風呂はわたしたちの暮らしにとって必要不可欠な場所。そんなお風呂で、季節の移ろいを感じるなんて日本ならではの風習かもしれませんね。
今回ご紹介した季節湯はほんの一部。月ごとに12種類の湯があるので、改めてご紹介いたします!旬の植物を取り入れた「季節湯」で、四季折々の香りを楽しんでみてはいかがでしょうか。