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腸活の味方!発酵食品の秘密

健康や美容につながると話題の「腸活」。
腸活の手助けや体に良いとされる「発酵食品」もまた注目を集めています。それではなぜ、発酵食品は体に良いのでしょうか。そもそも「発酵」はどのようにして起こるの?「腐る」とは何が違うの?今回は、そんな疑問にお答えしていきます。

1.「発酵」とは?「腐敗」との違い

腸内環境の改善や健康維持のために、納豆やヨーグルト、味噌などの発酵食品を毎日食べているという人も多いはず。

そんな中で、ふと「発酵食品ってどうやってできているの?」「発酵と腐敗って何が違うの?」などの疑問をもったことはありませんか?

発酵と腐敗は、どちらも「カビ」「酵母」「細菌」の3種類の微生物の働きが関わっていて、私たちの体に有益な物質を作ることを「発酵」、有害な物質を作ることを「腐敗」と呼び分けています。
ただし、発酵と腐敗には明確な線引きはなく、文化や習慣、個人的な価値観によって判断されています。

発酵に関わる微生物と主な食品
⚫︎カビ(麹菌、アオカビ、カツオブシカビなど)⇨ 甘酒、鰹節、テンペ、豆腐よう など
⚫︎酵母(パン酵母、ビール酵母、清酒酵母 など)⇨ パン、日本酒、ビール、ワイン など
⚫︎細菌(乳酸菌、酢酸菌、納豆菌など)⇨ ヨーグルト、納豆、キムチ、乳酸菌飲料 など

上記以外にも、カビと細菌の両方が作用して作られるカマンベールチーズや、3種の微生物全てが作用してできる味噌・醤油などがあります。発酵は微生物単体だけでなく、複数の微生物の働きによって生成される食品も多く存在するのです。

発酵食品が持つ独特の匂いもまた、微生物の働きによって発生しています。
微生物の活動によって排出される匂いと、元の食品の匂いが合わさることで「発酵食品の匂い」と感じるのです。
パンやチーズのようにいい匂いと感じるものもあれば、納豆やくさやなど強烈な匂いを発するものなど、その種類もさまざま。

私たちが「発酵」と「腐敗」を見分ける手段の一つが、この「匂い」なのです。
発酵した食品と腐敗した食品では、匂いの要素が異なります。

「発酵」によって発生される匂いの元は、主に乳酸やアルコールなど。食品によっては、発酵すると甘い匂いがしたり、リラックス効果をもたらすものがあると言われています。
一方、「腐敗」によって発生する硫化水素やアンモニアなどの刺激臭は、人にとって不快な匂いとして判断されるのです。

2.日本は”発酵大国”?!

日本食には、発酵させた食材が多く存在します。
中でも、和食の基本調味料である「さ(砂糖)し(塩)す(酢)せ(醤油)そ(味噌)」のうち、す・せ・その3種は発酵食品です。
納豆や漬物の他、ふなずし(滋賀県)、奈良漬(奈良県)なども発酵食品として人気のある食べものです。

日本が発酵食品大国になった理由には、気候や歴史が関係しています。
日本は、温暖で海に囲まれた湿度の高い国であるため、発酵には最適な環境。さらに地域や季節によっても気候は異なるため、その土地に根付いた独自の発酵食品も多く誕生しました。

また、発酵の歴史は古く、奈良時代から始まったと言われています。
当時、食の中心はお米でしたが、魚や野菜が付け加えられるようになり、それらを長期保存するための手段として発酵技術が発展していきました。
当時の「鮨(すし)」は、現在の寿司とは異なり、魚を塩と水で発酵させた貴重な保存食として扱われていました。

3.発酵食品のメリット

なぜ、発酵食品は健康や美容に効果的と言われているのでしょうか。ここでは、発酵食品のメリットと体に良い理由をご紹介します。

【発酵食品のメリット】
①旨みや栄養価が上がり、栄養の吸収をスムーズにする
食品が発酵することで、旨み成分や栄養価が増加します。
さらに、微生物の働きによって、タンパク質やでんぷんが分解され、消化・吸収がしやすくなります。私たちの体は食品を消化管で分解して栄養素を取り込んでいるので、発酵はこの役割を果たしています。

②食品の保存性を高める
食品を保存するためには、何よりも「腐敗」に注意が必要です。
冷蔵庫などがなかった時代は、食品を乾燥させたり、塩漬けなどに加工。そして、発酵させて保存してきました。発酵によって作られる乳酸や酢酸、アルコールには殺菌作用があるため、腐敗の原因となる雑菌を抑えることができるのです。

【発酵食品が体にいい理由】
①腸内環境の調整
私たちの腸内には「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」という3種類の腸内細菌(腸内フローラ)が無数に存在しています。
近年注目されている「腸活」は、この腸内細菌のバランスを整えることを意味しています。

発酵食品には「善玉菌」が多く存在し、大腸菌などの悪玉菌の働きや繁殖を抑制。さらに、食べ物の消化吸収を助けるビタミンB群やビタミンKを生成する働きがあります。
腸内細菌のバランスが整うことにより、便秘や下痢、肌荒れなどの予防が期待されています。
大人の場合、腸内細菌のバランスは「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」が理想的。
補足)最近の研究では、善玉菌すべてが体に良いものとは限らないこと、悪玉菌でも体に有効な働きを持つものが存在することが発見されてきています。

②ストレス軽減
腸は「第二の脳」と言われるほど、脳と密接に関係しています。
それぞれの器官が影響を与え合うことを「脳腸相関」と呼び、様々な研究が行われています。

脳がストレスを感じると腸内細菌のバランスが崩れ、便秘や下痢、腹痛などといった症状が表れます。逆に、腸内細菌のバランスが乱れることによって、ストレスを感じやすくなります。ストレスが原因で、暴飲暴食に走ってしまうと、さらに腸内フローラのバランスが乱れるなどの悪循環に。
腸内環境が乱れたまま放置していると、うつ病などを発症する可能性もあるとも言われています。
そのため、腸内環境を整える発酵食品を摂取することで、ストレス軽減が期待できるのです。

また一部の発酵食品(味噌、納豆、ぬか漬けなど)には、抗ストレス作用が期待されるアミノ酸の一種「GABA(ギャバ)」が含まれており、脳や神経の興奮を鎮め、リラックス効果も期待できます。

③代謝がよくなる
多くの発酵食品に含まれるビタミンB群には、代謝を活性化させる働きがあります。また、腸内環境が整うことで血液の流れもよくなります。そのため、老廃物の排出や、脂肪燃焼を促進させます。

4.世界の発酵食品 臭いランキングTOP5

発酵食品は世界各地で親しまれています。中でも特に臭いとされる食品TOP5をご紹介していきます。

1位:シュールストレミング/スウェーデン

世界で一番臭い食品として紹介されるシュールストレミング。
スウェーデン語で、シュール(Sur)は「酸っぱい」、ストレミング(strömming)は、「バルト海産のニシン」を意味します。

4〜5月ごろに産卵期を迎えるニシンを塩水に付けて作られる、スウェーデンの伝統的な発酵食品です。塩分濃度の低い塩水とニシンを缶詰に入れ、12〜18℃でゆっくりと発酵。8月中旬ごろに食べごろを迎え、缶詰を開けると強烈な匂いを放ちます。
その臭さは、焼きたてのくさやの約6.4倍、納豆の17.9倍とも言われています。

2位:ホンオフェ/韓国

韓国料理のひとつであるホンオフェは、エイの刺身を発酵させた伝統的な食材です。
深めの壺や瓶の中に、わらや松の葉を発酵させた堆肥を敷き、エイの切り身を置いたら、さらに堆肥を被せて蓋をします。
わらの発酵熱でエイの切り身を発酵させてできたホンオフェは、激しいアンモニア臭が特徴。
しかし、低脂肪・高タンパクでスタミナもつく食材として韓国では昔から愛されています。マッコリと一緒に楽しんだり、豚肉やキムチで包んで食べる方法があります。

3位:エピキュアーチーズ/ニュージーランド

チーズの中でも最も匂いが強いことで知られているエピキュアーチーズ。
牛乳を原料に作ったチーズを缶詰に入れ、3年間熟成させて作られています。
熟成期間中、缶詰の中では乳酸菌が活性化することで発酵が進み、チーズが液状化するとともに炭酸ガスや硫化水素が発生し、強い匂いが発生します。

4位:キビヤック/アラスカ、グリーンランド

アラスカやカナダ、グリーンランドなど寒冷地域の先住民族の間で貴重なビタミン源として重宝されているキビヤック。なんとアザラシのお腹の中にアパリアスという小型の海鳥を詰め込んで、1年以上土の中に埋めて発酵するという独特な製法で作られています。
詰め込む海鳥の数は、数十羽から数百羽、多い時には一匹のあざらしに700羽も詰め込むこともあるそう。キビヤックの臭さは納豆の約3倍と言われています。

5位:くさや/日本

日本国内で最も臭いと言われている発酵食品。新島や八丈島などの伊豆諸島の名産品である魚の干物です。
ムロアジやトビウオなどの青魚を捌いて内臓や血合いを取り除いた後、くさや液という特有の匂いのする調味料に10〜20時間ほど漬け込みます。
くさや液は、魚を漬け込むための塩水を長年継ぎ足しすることで出来上がった発酵が進んだ液のこと。塩や水が大変貴重だった時代、一度使った塩水を捨てずに使い続けたことが始まりです。
くさや液に漬け込んだ後は、水に漬けて塩分やくさや液を抜き、天日干しをして乾燥させて完成。

フライパンやトースターで焼き、焼酎や日本酒と共にいただくと独特な風味を味わうことができます。※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。

いかがでしたか?
発酵食品は微生物の働きによって独特な匂いを発していますが、栄養価も高く、腸活や健康維持にとって重要な役割を果たしています。
塩分を多く含む食材もあるので、適度に摂取しながら健やかな毎日を送りましょう。

参考サイト
ヤクルト本社
発酵日和 Hakko Beautiful days
発酵により生まれる香り|アサヒグループ
脳腸相関が科学的に説明できるようになってきています | 太陽化学株式会社

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