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カレーを引き立たせるスパイスの香り

子どもから大人まで幅広い世代で親しまれ、日本の国民食とも言えるカレー。そのルーツはインドにあると言われています。
カレーは世界各国に広がり、独自の文化を経て、見た目も味も種類豊富に進化しています。今回は、国ごとに異なるカレーの種類とその香りの特徴をご紹介します。

1.カレーの由来

起源であるインドでは、香辛料やハーブを使った汁状の料理を「カリ」と呼んでおり、それがヨーロッパへ伝わって、16〜17世紀ごろに今日の「カレー」ができたと言われています。
その後、カレーはヨーロッパから東南アジアを中心に広がっていきました。
今では、国ごとにさまざまな具材を使った料理となり、その呼び方もそれぞれ異なります。

2.「香り」をつけるスパイスたち

香りをつける代表的なスパイスをご紹介します。カレーらしいスパイシーさや、味に深みを与えてくれる香りなど種類もさまざま。特徴を早速チェックしていきましょう。
クミン

クミンはカレー特有のエスニックな芳香をもつスパイスです。カレー以外にも、肉や野菜料理、煮込みもの、炒めもの、パンやチーズを作るときなど、世界各地でさまざまな料理に使われています。
炒めたクミンを米に混ぜて炊くと、カレーによく合う、香り高いクミンライスが出来上がります。

コリアンダー(コリアンダーシード)

コリアンダー(コリアンダーシード)は柑橘系の甘く爽やかで、ほのかにスパイシーな香りが特徴です。古代エジプト時代から、薬用や調味料として用いてきた最古のスパイスのうちの一つ。アフリカ、中近東、中南米、アジアなどで、肉・卵・豆などの料理に使われています。
ほんのり甘い香りは、クッキーやカステラなどのお菓子作りにも◎

カルダモン

甘くエキゾチックで、爽やかな強い香りを持つカルダモン。「香りの王様」や「スパイスの女王」と呼ばれることも。
北欧、インド、エジプトなどで多く使われるスパイスで、肉・魚料理、パンやお菓子、ソース、ドレッシングなどの香りづけに用いられています。
北欧やインドでは、食後やお酒を飲んだ後の口臭ケアにカルダモンを噛む習慣があるそう。

3.国別スパイスカレー

ここからは、国ごとの代表的なカレーとその特徴をご紹介していきます。
インド

お馴染みのインドカレーは、複数のスパイスを使用して作る、いわゆる「スパイスカレー」です。
宗教上の理由から、牛肉や豚肉を食べない方が多いため、鶏肉や羊肉、魚、豆が使われるのが一般的。
また、北部と南部でカレーのスタイルも大きく異なります。

北部では、動物性の油脂や乳製品が使われることが多く、どろりとした濃厚なカレーが特徴。主食は全粒粉のパンやナン、チャパティーなどの小麦がメイン。
南部では、米を主食として、カレーリーフやマスタードシード、ココナッツミルクなどを使った、酸味のあるサラッとしたタイプのカレーが多く見られます。
インドでは、香り付けにコリアンダーシード(種子)がよく使われます。コリアンダーと相性の良いクミンもインド料理には欠かせません。

タイ

インドと同じくらい、日本でも馴染みのあるタイのカレー。現地では「ゲーン」と呼ばれ、独特な風味と味付けが特徴的。
数種類の唐辛子をベースに、フレッシュなハーブを使用しているため、辛さの中にも爽やかな風味と清涼感が感じられます。
スパイスと合わせて大切になるハーブは、主に、こぶみかんの葉、レモングラス、ホーリーバジルなどが使われます。
このハーブの組み合わせによって、グリーンカレーやレッドカレーなど様々なカレーが作られます。

ネパール

インド北部に位置するネパールは寒冷な土地が多いため、”にんにく”を多く使ったカレーが主流です。また、体を温め、体力をつけてくれるウラドダールという豆も使われます。インドカレーとは異なり、ルーを使わずに、水やヨーグルト、トマトなどで煮込むことが特徴です。

主食は白いご飯の他、そば粉を練ったディロやチャパティー。
ネパールカレーの代表的なスパイスは、クミンシード、ターメリック、ガラムマサラなどです。クミンシードは、カレー特有の香りを与えるスパイスで、消化促進や食欲増進の効果があります。

スリランカ

とろみがなく、サラッとした軽い口当たりのスリランカカレー。ココナッツミルクをベースに作られることが多いため、仕上がりはまるでスープのよう。
また、1つのカレーに使うメイン具材は1種類だけ。魚やエビなどの魚介類が主流ですが、羊肉、鶏肉、豆、野菜を使うこともあります。

お皿の中央にご飯、その周りを囲うように数種類のカレーや付け合わせを盛るのもスリランカカレーの特徴です。
味の決め手となるスパイスは、日本人には聞き馴染みの少ない「トゥナパハ」と呼ばれるミックススパイス。これはコリアンダーやクミン、シナモン、クローブなどを煎ってから細かく潰して混ぜ合わせたもの。
そして、スリランカ料理に欠かせないハーブ「ランペ」は、別名「パンダリーフ」や「ニオイタコノキ」とも呼ばれ、独特の甘い香りと鮮やかな緑色が目を引きます。

イギリス

イギリスでは17世紀にインドを植民地化したことからカレーの文化が始まりました。しかし、イギリス人にとってインドカレーは辛すぎたり、香りが強すぎたため、自分たちの口に合うようにアレンジしていったといわれています。
イギリスのカレーは牛・豚・鶏・羊などの肉を主な具材として使い、とろみのあるシチューのような味わいが特徴。
簡単にカレーが作れる「カレー粉」もイギリス発祥です。

ドイツ

イギリス以外のヨーロッパでは、カレーはまだまだ普及していないのが現状。
しかし、ドイツ・ベルリンにはカレーパウダーを使った「カリーヴルスト」と呼ばれる料理があります。
ブラートヴルストという豚肉や仔牛肉で作ったソーセージを茹でて(焼いて)、その上にケチャップとターメリック、クミンなどを主原料としたカレー粉をトッピングしたファストフードで、ビールに合うおつまみとして人気があります。
ドイツ全土で愛されているカリーヴルスト、一度は本場で味わってみたいですね。

いかがでしたか?
一言でスパイスと言っても、スパイシーな香りのするもの、甘さと爽やかさを備えた香りのするものなど様々でした。
今回ご紹介したスパイスはほんの一例。数あるスパイスを絶妙に組み合わせて作られた世界各国のカレーは、どれも美味しそうな物ばかり。
香りや風味など五感で感じながら、”カレーの食べ比べ”をしてみてははいかがでしょうか♪

参考サイト
香りをつけるスパイス&ハーブ – カレー事典|S&B
世界のカレー|カレー事典|S&B
ハウス食品

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