においと嗅覚の関係
わたしたちは毎日の生活の中で、様々なにおいを感じています。
コーヒーの香りでリラックスしたり、花の香りに癒されたり。
今回は、においを感じる仕組みや、心や体に与える作用についてご紹介します。
1.においを感じる仕組み
私たちは、あらゆるにおいを鼻で嗅ぎわけていますが、その判断をしているのは実は「脳」。
においは、目には見えない小さな化学物質の集まりで構成されています。
「コーヒーの香り」や「花の香り」もこの化学物質が何百種類と複雑に混ざり合ってできています。
鼻からにおいの物質が入ると、鼻腔の奥にある嗅上皮(きゅうじょうひ)と呼ばれる特別な粘膜の嗅細胞でキャッチされます。におい物質の情報は、この嗅細胞で電気信号に変換され、神経を伝って脳へと伝えられます。
においを嗅いで「いい香り」「苦手な香り」と判断したり、「昔よく遊んでいた公園の花の香り」などと過去の記憶が蘇ったりするのは、脳に伝わるスピードにも関係しています。
においの伝達は、視覚や聴覚に比べて経由する神経が少なく、嗅覚から脳までの距離も短いため、いち早く脳へと伝わります。そのため、においはより早く感情や記憶に働きかけるのです。
また、嗅覚は他の感覚機能とは異なり、ダイレクトに意識や感情に作用することができます。次の項目ではその作用についてみていきましょう。
2.においが与える作用
においが脳へ伝達されると、さらに脳の各部、主に大脳辺縁系にある3つの部位に伝えられます。
1つは扁桃体、2つめは視床下部、3つめは海馬と呼ばれる部位へ、それぞれ分かれていきます。
これら3つは、脳の中でも本能行動や感情を司る部位。
扁桃体では好き・嫌いなどの「感情」に、視床下部では自律神経系や内分泌系などの「生理効果」に、海馬では「記憶」に作用します。
普段から心地良いと感じる香り体験や、楽しかった記憶を呼び起こす香りを見つけることで、心や体のバランスを整えることにもつながるのです。
3.嗅覚の特徴
順応
同じにおいを長く嗅いでいると、そのにおいを感じにくくなる性質のこと。
常に嗅いでいる自分のにおいにはなかなか気が付きませんが、他人のにおいが気になるというようなことがあげられます。
好き嫌い
同じにおいを嗅いでいても、全員が好きなにおい・嫌いなにおいが同じとは限りません。
体調や睡眠時間などでも嗅覚は低下していきますし、これまでの体験(特に幼少期)や、食体験においても一人として同じ人はいないからです。
4.においの雑学
知っているとちょっと得する?においにまつわる面白い雑学をご紹介します。
■胎児はお腹にいる時から母親の食べたもののにおいを嗅いでいる
妊娠3ヶ月を迎えると、お腹の中の胎児は頭や胴、手足などの四肢や顔のパーツがはっきりし、妊娠7ヶ月ごろには脳も発達していきます。
胎児は、羊水に包まれていても嗅覚が早い段階から発達しているので、母親の血液中に溶けているにおい物質を感じることができるそうです。
■動物の中で最も嗅覚が発達しているのは「象」
におい物質を認識する「嗅覚受容体の数」を調査することで、動物のにおいを感じとる能力がわかるといわれています。
この嗅覚受容体、ヒトが約400個に対し、なんと象は約5倍の2,000個も保有しているとの研究結果もあるのだとか。
ちなみに鼻が利くと言われている犬は、約800個の嗅覚受容体を持っています。
■イルカは嗅覚が退化している
上記の研究では、同じ哺乳類の中でもイルカやクジラは嗅覚受容体が少なく、嗅覚が一部失われているとも言われています。海の中では嗅覚を使うことがほとんどないため、進化の過程で退化していったのではないかと考えられています。
他の感覚機能よりも脳や感情に大きな影響を与える「嗅覚」。
気分がのらない、なんだか元気がない。
そんな時には、好きなにおいを嗅いでみると良い気分転換になるかもしれませんね。
参考サイト
東邦大学
ニオイセンサ | 嗅覚のメカニズム | 新コスモス電気株式会社
においについて | 三協エアテック株式会社
日本デオドール