香りと旅して

香り

天然香料と合成香料の違いとは

香りの原料は一般的に「天然香料」と「合成香料」の2つに分類されます。
普段使っているコスメや消臭アイテムで、この表記を目にしたことがあるという方もいるかもしれません。今回はこの2種類の香料の違いと、それぞれの特徴をご紹介していきます。

1.天然香料とは

天然香料とは、自然に存在している動植物から抽出された100%天然由来のものを指します。
主に花や草木、果実などから採取され、化学肥料や農薬を一切使用していないオーガニックの植物から、人の手によって育てられたものも含みます。
「精油」や「エッセンシャルオイル」と記載されているものは、天然香料が使用されています。

天然香料は、食品衛生法で「動植物より得られる物又はその混合物で、食品の着香の目的で使用される添加物」と定義され、約600品目が「天然香料基原物質リスト」(平成22年消食表第337号別添2)に記載されています。

2.天然香料の抽出方法

天然香料は、抽出する動植物に合わせて抽出方法が異なります。主な方法は、以下の3種類です。

抽出法① 水蒸気蒸留法
ハーブや樹木など、水に溶けにくい性質の植物を、水蒸気蒸留させて香料を抽出する方法です。
水蒸気を蒸留させる専用の釜に原料の植物と水を加熱すると、植物中に含まれている精油成分と水蒸気が一緒に揮発。圧力によりコンデンサー(凝縮器)と呼ばれる機械へと送られます。コンデンサー内には、冷たい水が入っており、精油成分と水蒸気を急激に冷やして凝縮(液化)させるのです。

液化した精油成分と水蒸気は、フローレンス瓶と呼ばれるボトルの中に、精油とハイドロレート(芳香蒸留水)に分離して集められていきます。芳香蒸留水(フローラルウォーターとも呼びます)には、わずかに植物の芳香成分などが溶け込んでおり、アロマオイルを希釈する時などに使用されています。一般的にローズウォーターやラベンダーウォーターなどが知られています。
この方法によって抽出された精油は揮発性があり、水に溶けない性質をもっています。

抽出法② 圧搾法
レモンやオレンジ、グレープフルーツなどの柑橘系に用いられることが多い抽出方法です。
加熱処理を行わず、果皮に圧力を加えて絞り取ります。
抽出された成分は、植物のエッセンスそのままなので、フレッシュな香りが魅力です。その分香りの劣化が早いのが難点といえます。

抽出法③ 溶剤抽出法
水蒸気蒸留や圧搾には適さない香料を抽出する時に用いられる方法です。
一般的にはローズやジャスミンなど繊細な花びらから香料を抽出する時に使われます。
まず、原料に溶剤と呼ばれるヘキサンやアルコールを混ぜ合わせ、原料の芳香物質を溶剤へと移していきます。次に溶剤を低温で揮発させると、芳香物質と「コンクリート」と呼ばれる半固形状の物質が現れます。これをエタノールに溶かすと、エタノールに芳香物質が移ります。再びエタノールを揮発させると香料を抽出することができます。
このようにいくつもの工程を経てじっくりと抽出された香料を「アブソリュート」と呼び、華やかで濃厚な香りが特徴です。

3.合成香料とは

天然香料とは異なり、人工的に作られた香料を「合成香料」と呼んでいます。
化学反応を利用して作られる合成香料は現在約3000種を超えており、そのうちの約500種ほどが国を超えて売買されています。

合成香料は、自然界から採れる香料物質を元に作られた「半合成香料」とパルプ製造の副産物から大量に出る化合物や石油などから人工的に作られたものの2種類に分けられます。

「ポプリ」や「アロマオイル」などと表記されているもののほとんどがこの合成香料を使用しています。その他、石鹸や化粧品、芳香剤など多岐にわたって使用されています。

天候や産地の状況によって香りやコストが変動しやすい天然香料に比べ、品質にばらつきがなく、大量かつ一定コストで安定的な製造ができるのが合成香料の特徴です。

それまで階級の高い限られた人にしか使えなかった香水も、合成香料が作られるようになってからは一般市民にも広がり、多くの人が香りを楽しむことができるようになりました。

4.アロマの楽しみ方

天然由来のものはナチュラルで体に良く、合成製品は悪影響を及ぼす、と思われがちですが、香料に関しては完全にそのように分ける必要はありません。
自然から抽出された天然香料でも、使い方によっては人体にマイナスに作用する場合もあるからです。

イランイランやユーカリなどの精油は直接皮膚に触れると痒みや炎症を引き起こしてしまったり、レモンなどの柑橘系の精油は塗布した皮膚に強い紫外線が当たると炎症が起きる可能性があります。

精油を使う前には、使用方法をきちんと確認する、使用量を守る、初めて使う際にはパッチテストを実施するなど、適切に使用していきましょう。

香料の特徴を理解したり、シーンや目的に合わせて香料を使い分けることで、楽しみ方の幅も格段に広がっていきますよ。
香りの世界はとても奥が深く、知れば知るほど香りのチカラに魅了されるはず。
他の記事では、香りの分類をご紹介していますので合わせてご覧ください。

参考サイト
香料の原料 | 日本香料工業会 – Japan Flavor and Fragrance Materials Association –

TO TOPTOPに戻る