香りと旅して

香り

精油の抽出部位の違いと役割

植物の花・葉・果実・樹脂・根は、それぞれ生命維持に欠かせない重要な役割をもっており、その部位ごとに香りを放っています。そして、そこから抽出される精油(エッセンシャルオイル)も、部位の違いによって特徴も変わります。
また、種類の異なる植物でも、抽出部位が同じであれば共通の特徴や作用があるようです。

1.植物にとっての香りの働き

植物の香り成分には様々な効果があるといわれています。その中でも重要な2つの例をご紹介します。

①誘引効果

植物は子孫を残すために、昆虫や動物を利用しています。
花が受粉する時に大切なのは「できるだけ遠くの花と受粉する」こと。近い花同士では遺伝子が似ている可能性があるので、環境変化や病気が起こるとすべての植物が死滅する可能性が高くなってしまうのです。

植物は遠くの花と受粉するために、花からいい香りを出して虫を呼び寄せ、蜜を与えることで、花粉を付着させて遠くまで運んでもらいます。
また、完熟したいい香りのする実は動物の食料となります。種と一緒に食べてもらうことで別の場所で排泄され、発芽することができるのです。

②忌避効果

植物は花や実、そして葉から香りを出しています。
一部の葉の表面には匂い袋があり、そこから虫が嫌がる香りを出して、葉が食べられないように自己防衛をしています。ミントやローズマリーなどのハーブがその代表です。
このような匂いは常に作られているわけではなく、虫や病原菌がやってくると作り始めるので、生きるためのエネルギーを効率よく使っています。
この他にも、カビや酵母などの真菌・細菌の発生や繁殖を防ぐ働きを持つ植物も多く、これらも自己防衛の一環と考えられています。

2.植物の部位別の役割と、精油の違い

ここからは、植物の部位別にどのような役割を担っているのか、またその部位から抽出される精油の特徴をみていきましょう。
ー花

花の役目は、種を作り、子孫を増やすこと。花粉を運んでくれる虫や蝶を香りで呼び寄せる他、花をピンクや黄色、白など目立つ色にすることで虫たちを呼び寄せていると言われています。

花から抽出される香りは、華やかで甘美な香りのものが多くあります。
花自体が植物の “生殖器” にあたるため、その香りは人間にとってホルモンバランスの調整に効果が期待できます。
また、リラックスや楽しい気分になりたい時などの精神的作用も期待でき、女性らしさを表現する香りとしても人気があります。

●花から抽出される主な精油
チュベローズ、ネロリ、ローズ、オスマンサス、ジャスミン など

ー葉

葉は、光合成によって植物に必要な栄養分(主に糖)を作り出しています。それとともに、空気中の二酸化炭素を吸い込み、人間や動物に必要な酸素を生み出します。光の強弱を感じとり、花芽をつけたり生長を調整するなどの役割をもっています。
葉から抽出される香りは、シャープですっきりとした香りが特徴。
リフレッシュ作用や、細菌・真菌、ウイルスなどの抗菌作用が期待できます。

●葉から抽出される主な精油
ホワイトセージ、ユーカリ、ティートリー、ゼラニウム など

ー果実・種

果実をもつ植物は種子を広めるため、おいしい実と匂いで昆虫や動物を呼び寄せて、食料となることで別の場所で排泄され、発芽しています。果実は種を守り育てる役割があり、種は発芽するための栄養や遺伝子が凝縮されています。

果実・種から抽出される香りは爽やかな香りのものが多く、消化器系のトラブルが気になるときやリフレッシュしたい時などにもおすすめです。

●果実・種から抽出される主な精油
キャラウェイ、クミン、ピンクペッパー、カルダモン など

ー樹脂

樹脂は幹から出た樹液から揮発成分が抜けた後に残ったもの。樹液は葉で生成された糖分を多く含んでおり、虫たちはそれを栄養とするために集まります。樹脂は、幹の傷を修復し、細菌などから身を守る働きがあります。
一般的に、ヤニやうるしと呼ばれ、バレエシューズの滑り止めや弦楽器用の弦の保護など、私たちの暮らしにも役立っています。
樹脂から抽出される香りは、スモーキーな中にも柑橘のような爽やかさが感じられる香りが特徴。心身を癒したいときにピッタリです。
ブレンドした精油の香りをまとめたり、長く保たせる保留剤としての役割も果たします。

●樹脂から抽出される主な精油
ベンゾイン、ミルラ、フランキンセンス、スティラックス など

ー根

根は植物そのものを支える土台として、また土から水を吸収し、枝葉に栄養分を届けるといった2つの役割があります。
根から抽出される香りは土のような深い香りのものが多く、気持ちを落ち着かせたい時などに最適です。

●根から抽出される主な精油
ジンジャー、ベチバー、スパイクナード など

いかがでしたか?
植物の部位によって、抽出される精油(エッセンシャルオイル)の香りの印象も異なり、与える作用もさまざまです。
精油を選ぶ時には香りだけでなく、どの部位から抽出されたものなのかにもぜひ注目してみてくださいね。

参考サイト
植物の仕組み|ガーデニングQ&A|アースガーデン 

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