香りと旅して

香り

もしも「におい」がなくなったら…

季節を感じる花の匂いや美味しそうなご飯の匂いなど、私たちは普段あらゆる匂いと共に生活しています。そんな当たり前のように感じている匂いが、もしもなくなってしまったら、暮らしにどのような影響が起こるのでしょうか。 

1.匂いを感じ取る「嗅覚」の役割と効果

人間は、外からの情報のほとんどを「視覚」と「聴覚」から収集していて、匂いを感じる「嗅覚」からの情報はわずかだと言われています。

しかし、嗅覚は自分の身を守る重要な役割があります。傷んだ食べ物の匂いや、火事の煙やガス漏れなども、匂いによってその異常事態を察知することができます。
※本来ガスは無臭の気体ですが、1937年にアメリカで起こった爆発事故以来、世界的にガスに匂いを付けるようになりました。

さらに、匂いは私たちのメンタルに良い効果を与えてくれます。
リラックスや気分転換を目的としたアロマテラピーなどが代表的。匂いは脳を刺激して、人の感情や記憶にも働きかけます。特定の匂いを嗅いで昔のことをふと思い出す経験は誰にでもあるはず。
匂いは嗅ぎ分けるだけでなく、好き嫌いなどの感情や判断にも作用します。

動物は人間よりも嗅覚が優れているため、餌を見つけたり、自分のなわばりを決めたり、身を守るためにも「匂い」を活用しています。
例えば、犬の嗅覚は人間の3,000〜10,000倍とも言われており、特定の匂いではなんと人間の100万倍以上にもなるそう。
犬のなわばり意識の強さは、祖先である狼の行動や習性が関係していると言われています。
狼は巣を持ち、なわばりを持って生きる動物。犬もその名残としてなわばりを持つのだと考えられています。

犬が不安を感じた時に決まった場所に逃げ込む、来客があると吠えるなどの行動は、匂いを嗅ぎ分けて自分のなわばりを守るためなのです。
動物は人間以上に、嗅覚を頼りに生活を送っているのですね。

2.匂いを感じる仕組み

人間の鼻の奥には、嗅上皮(きゅうじょうひ)と呼ばれる感覚器官があります。
ここにある嗅細胞が匂いの物質を読み取って電気信号に変換し、神経を伝って脳に情報を伝達します。

風邪症状などで鼻詰まりが起こると粘膜が腫れてしまい、匂いの情報が届かなくなります。匂いの情報が脳に伝わらない=匂いがわからない、というメカニズムになっているのです。

地球上には、20〜40万の匂いの分子が浮遊しているとされていて、多くの物質が放つ匂いは、その組み合わせによって変化します。
複雑な分子の組み合わせで構成される匂いですが、人間は数十万種類の匂いを感じとることができると言われています。

3.匂いがなかったらどうなるの?

①味がわからなくなる
匂いを感じる嗅覚と、食べ物の味を感じる味覚は、密接な関係があります。鼻と口で感じ取った食べ物の感覚は、ともに脳へと伝達され、脳がその情報を統合することにより「風味」として認識し、味わうことができるのです。

②お腹を壊す人が増加する
食べ物が腐ると、悪臭が漂いはじめます。しかし、この嫌な匂いが発生しないと、見た目では腐っていると判断ができずに、誤って食べてしまう危険があります。傷んだ食べ物が原因で食中毒を起こすなど、体へ悪影響を及ぼします。

③動物のケンカが増える
動物は体から匂いを出すことによって、自分の居場所を周りに伝えています。体の一部を木や岩にこすりつけたり、尿などをかけたりする「マーキング行動」がこれにあたります。なわばりを主張することによって、自分と相手の居場所を住み分けています。
マーキングをするための匂いがなくなると、「自分のなわばりに何者かが入り込んできた」と認識し、相手を攻撃しやすくなります。

④子孫繁栄に影響が出る
多くの生き物にとって重要な「生存・繁殖・進化」という行動は、「匂い」がなくては成立しません。
例えば、果物の実は、花が受粉することによって生まれ、成長していきます。花から甘い香りを出してハチやガ(花粉媒介昆虫)を呼び寄せ、受粉を手伝ってもらっています。植物の花から匂いがなくなると、虫も寄ってこなくなり、果実が作れなくなってしまうのです。スイカやりんご、もも、いちご、梨などがこれにあたります。
また、多くの動物のオスは繁殖をする時に、フェロモンという匂いの物質を手がかりにメスを探します。このフェロモンがなければ動物は繁殖することができず、絶滅してしまうでしょう。

いかがでしたか。
匂いの世界は意外にも奥が深いことがわかりました。
匂いは、生き物とって必要不可欠。匂いがなくなると、暮らしに多大な影響をもたらします。いい匂い、嫌な匂いなど….私たち人間も複雑な匂いを嗅ぎ分けて日々暮らしています。
様々な匂いに少し意識を向けてみると、新しい発見があるかもしれませんね。

参考サイト
におい大丈夫ですか?| 国立長寿医療研究センターホームページ
京都リフレ新薬株式会社
においのお話 | 第一薬品産業株式会社

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