香りと旅して

香り

季語で味わう香りの世界

季語は、古来より楽しまれてきた「俳句」に用いられる、季節を表現した言葉。春夏秋冬それぞれの季節を、その時の情景や天候、季節行事などの言葉を用いて表現されます。
8000種あると言われている季語の中で、今回は「香り」に関する季語をご紹介します。ぜひ、四季を思い浮かべながらご覧ください。

1.「季語」って何?

「季語」は、俳句の世界でなくてはならない言葉。
まだ文字が存在しなかった時代に、人々は国や一族の歴史を「歌」にして次の世代へと伝えていました。この歌が「和歌」のはじまり。その後、俳句や短歌が生まれました。

俳句は、日々目にする情景や四季折々の自然に触れたり、いろいろな人間模様を通して、心の中に湧き上がってきた喜怒哀楽の感情などを、「特定の季節を表す言葉=季語」を交えて、5・7・5の17音で表現していきます。
ただし、言葉で季語を表現しても、人の感じ方やイメージはそれぞれ。自分だけが持っている季節のイメージで、”季語を味わう”ことが俳句の楽しさと言えます。

季語は全部でおよそ8000個あると言われていますが、無理に覚える必要はなく「歳時記(さいじき)」と呼ばれる季語集を辞書のように引き、その時々の季節に合わせて俳句を詠んでいきます。
俳句はもちろんのこと、手紙やあいさつ、日々の会話にも織り交ぜることができる季語。

天候や景色、植物だけでなく、季節を代表する食べ物、動物、生活習慣や行事などあらゆるものが季語として用いられています。

2.季語の分類/旧暦・太陽暦

季語による季節は、旧暦である太陰太陽暦と共に用いられてきた「二十四節気(にじゅうしせっき)」という区分法が基準となっています。

旧暦では「立春」・「立夏」・「立秋」・「立冬」を基準に四季を分け、それぞれ旧暦の1月から3月を春、4月から6月を夏、7月から9月を秋、10月から12月を冬とし、それぞれの季節をさらに6つに分類して表現しています。

現在、私たちは明治時代に作られた「太陽暦」を用いて四季を表現しています。そのため、季節に多少のズレを感じることがあります。

3.香りにまつわる季語

ここからは香りにまつわる季語を9種ご紹介していきます。”どのような香りなのか”ぜひ実際の香りを想像しながら、読んでみてくださいね。

「東風(こち)」 季節:初春

冬の寒さが和らぎ、春を告げる風、梅を開花させる風として多くの歌に詠まれています。
学問の神として祀られる藤原道真が詠んだ、

「薫風(くんぷう)」 季節:春〜初夏

「薫風」は緑の香りを含んだ、心地よい風のことを表します。5月の季語として用いられることが多く、春から初夏にかけて、手紙などの挨拶文にもよく使われます。

「風の香(かぜのか)」 季節:初夏
青葉の香りを吹きおくる、初夏の爽やかな風のこと。

「くちなしの花」 季節:夏

日本の三大香木と言われるほど、香り高いくちなし。その香りの良さを表現した俳句がこちら。

驟雨(しゅうう)は、にわか雨のようにざっと降ってあがる雨のこと。くちなしの香りが豊かに香っていたところに雨が急に降ってきて、香りが立ち消えてしまったことを”雨が踏みにじった”と表現しています。

「草いきれ(くさいきれ)」 季節:晩夏
夏草のむっとする匂いのこと。「いきれ」とは、蒸れてほてること。

「山椒の実(さんしょうのみ)」 季節:初秋

ミカン科の植物である山椒は、春に芽吹きはじめ、夏になると青い山椒の実がなり、青山椒として収穫されます。秋になると赤くなった実が裂け、中から黒い種子が出てきます。「山椒の実」は秋の季語ですが、「青山椒」というと夏の季語になります。

「草の香(くさのか)」 季節:仲秋(秋の半ばごろ)
秋の草の香り。春の萌える生命力のある香り、夏の生い茂ったむっとするような匂い(草いきれ)とは違う、しっとりとした香りを表現しています。

「柚子湯(ゆずゆ)」 季節:仲冬(冬の半ばごろ)
江戸時代の頃から続く、冬至の日に柚子の実を浮かべてお風呂に入る習慣のこと。香りの高い柚子湯は体があたたまり、万病を防ぐとも言われています。

「水仙(すいせん)」季節:晩冬
水仙は、清々しい芳香をもつ冬に咲く花。松尾芭蕉や与謝蕪村など、名だたる人物も水仙を俳句に詠んでいます。

季語は、形式ばったものばかりではなく、その季節を表す言葉であればOK。季節ごとに感じたモノ・コトを言葉にのせて文章を書いてみると、風情を感じる素敵なものになるはず。
香りにまつわる季語を活用して、季節の移ろいを楽しんでみてはいかがでしょうか。

参考サイト
【季語一覧】季語とは?春夏秋冬ごとの種類や意味を解説! | ワゴコロ

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