香りと旅して

香りと旅して

【高知県】収穫最盛期・ゆず農家の手仕事

エコロギーさんの取材を無事に終えた編集部。
続いてはいよいよゆず農家さんを訪問します。

ゆず農家さんを訪れる前にちょっと腹ごしらえ。小野川さんおすすめ「ゆういんぐ四万十」さんでお昼休憩です。

地元の方も集うレストランにて、ゆず果汁をたっぷりと使った「ゆず塩ラーメン」なるものを発見!

これは食べるしか他にないと即決。
ゆずの風味が広がる上品な味で、さらりと完食。

高知のうまいもんで満たされた編集部、そのまま売店をしばし散策。
これもまた旅の醍醐味です。

早速見つけました。
収穫最盛期というだけあって、東京では滅多にお目にかかれない破格さ、そして何より立派!やはり”ゆず大国高知”です。

こんなところで出会えるとは。
1株が手のひらに収まらないほど大きな生姜を発見!しかも、これで200円前後なんです。

恥ずかしながら、高知県は生姜の生産も日本一ということを知らなかったわたし。
これでどうだ!といわんばかりの立派な生姜様です。
恐るべし、高知。

迷わずどちらもお土産に購入させていただきました。

ゆずの成る地へ、いざ

お腹も満たされた編集部、小野川さんのアテンドでいよいよゆず農家さんへ。

“ゆず大国”と呼ばれるだけあって、実は、街中でも簡単にゆずの木が見られると思っていた編集部。しかし、ここまで1本もお目にかかれておらず。

一体、どこにゆずがあるのか…。
ちょっとだけ半信半疑の状態で車を走らせること約20分。

四万十沿いの広い通りから路地へと入り、どんどんと細い山道を進んでいきます。

車を止め、ここからは徒歩での移動に。

「足元ぬかるんでるから気をつけて!」
小野川さんは慣れた足取りで進んでいきます。

これこれ!
こういうのを待ってました!

初めての農家取材に胸が高まります。

取材には、険しい道がつきもの。周りの木々もどんどんと深まっていきます。
どんな景色が広がっているのかというワクワク感の一心で、足元を気にするどころか、足取りが軽くなっていく編集部。

無数に転がっています。

ふと道の傍らに目をやると、何やらベージュ色をした怪しい塊が大量発生。

よーく見てみると、なんと大量のゆずの種があちらこちらに。
こんなにたくさん!そして、きれいに種だけが落ちています。。

不思議な光景に出迎えられ、ますます期待が膨らむわたしたちは更に先へと進みます。

黄色く輝くゆず玉たち

いよいよゆず農家の竹内さんご夫婦とのご対面のとき。

この日も朝から収穫真っ最中とのこと。
すでに地面には、たくさんのゆずが転がっています。

一番緊張していた時。

「わー」「お邪魔しまーす」

子どものような歓声をあげながら登場してしまった編集部。

「ようきたねー」

初対面とは思えないほど気さくで明るいお出迎え。

ゆずの木の間で作業していたのは、まるで絵本の中から飛び出してきたかのような素敵な竹内さんご夫婦でした。

木の下までお邪魔すると、思わず取材ということを忘れそうになるくらい。
東京に住む我々にとっては初めての光景、爽やかな香りがあたりに広がっていました。

足元に広がるゆずたち。

ご挨拶もさながら、ご主人はどんどんとゆずの木に登っていき、剪定バサミを器用に使ってゆずを収穫中。慣れた手つきで地面へポトポトと落としていきます。

地面には杉の葉が敷き詰められていて、まるでふかふかのベッドのよう。
落ちてくるゆずを優しく受け止めています。

器用に登っていくご主人。

木の下では奥様により、余分な葉っぱや枝を切り落とす作業が進められています。

ゆずに傷がつかないよう、収穫はすべて手作業。

毎年この時期になると他のことに手がつけられなくなっちゃうから、大変大変。
奥さんは、少し困りながらも嬉しそうに教えてくれました。

ピンクがとってもお似合い。
優しく手早く。さすがです。

緩やかな斜面が続くこの農園には、約200本ほどのゆずの木が植えられており、50年以上前からご夫婦と息子さんの3人で管理をしています。

我々が登ってきた入り口からさらに遠くの上の方まで、ゆずの木がずらっと並ぶ竹内さんの農園。
1本1本生育状態を見ながら管理し、ようやく迎えた収穫の日。

こんな貴重な日に取材をさせていただけるなんて。
本当に感謝しかありません。

はじめて見た、ゆずのトゲ。
1本1本トゲを剪定していく。根気のいる作業

横に広がりながら成長するゆずの木や枝には、5cm以上もある大きなトゲがたくさん。
人間やゆずに刺さらないように管理するのが、一番気をつかうといいます。

1本の木から収穫できる量は、木によってバラバラ。
ゆず1個の大きさでも個数が変わり、大ぶりなものが少量採れたり、小ぶりなものが大量に採れたりと、その年になってみないとわからないそう。

気候によっても大きく左右されるので、収穫の時期が毎年楽しみなんだとか。

斜面に転がったゆずも手で回収していきます。

この日は、テニスボール大ほどのゆずが1本の木から採れ、黄色やオレンジ色など色味も様々でした。

さらに農園の至る所に、イシャシラズ、カキドウシという薬草やワサビなども採れるそう。
それだけこの土地は、土壌や水がキレイな証。

四万十川の恵は、色々なところにあらわれています。

ゆずへの想い

竹内さんのゆずは、表面がデコボコした少々歪な形。
普段スーパーで目にするものと比べると、かなりワイルドな印象です。

鈴なりになっているゆず

恐る恐るそうお伝えしてみると、

「見た目はあまり良くはないけれど、味や香りは大丈夫。皮まで食べられるがよ。」
と、奥様は笑いながら教えてくれました。

「玉で出しよるような丸ーく整ったゆずは、消毒やりゆうろ。
消毒せな、あんな綺麗な皮はできひん。」

エコロギーさんでお話を伺っていた時とは打って変わった土佐弁全開の小野川さん。

なるほど。
そんな見分け方があったなんて。勉強になります。

ご主人のやさしい表情が印象的。

「これからも使う予定はないがよ。自然に育てると、良い時も悪い時もあるけんどね。」

豊かな自然の中で、愛情いっぱいに育てられた竹内さんちのゆず。
いつの間にか私たちまで愛着が湧いてきます。

農家直伝!ゆずのうまい食し方

農家さんへいったら、是非とも聞いてみたかったこの質問。

「ゆずの美味しい食べ方」について。

収穫時期は手の込んだ料理がなかなか作れないという奥様ですが、色々と教えていただきました。

採れたてゆずの香りを全身で感じます。

「お友だちは、果汁と皮でゆず味噌やゆずジャムを作るからって、毎年ちょっともらいにきたりするがよ。

道の駅では、パウンドケーキなんか作るからちょうだいって言ってきたり。」

聞くだけで、美味しそうなワード。
ふむふむ。
どんなレシピなのか妄想が膨らむ一方です。

「何年もよう作ってなかったけんど、こないだ孫が来ちょったけ、ゆずジュースを作ってねぇ。そのまま絞りよるだけだけんど。
夏は氷を入れて水割り、冬はお湯割りにするといいが。」

ああ、聞いているだけでなんと幸せなことか。
東京で生まれ育った私にとって、経験のない贅沢な風景です。

「ここの人らは、ゆずの皮をしょうがと一緒に甘く煮たりとかね。
甘辛うに煮付けてそのまま食べてもいいし、冬はお湯で割って飲んだりするがいね。」

ゆず×しょうがの美味しいマリアージュが、ここ四万十のものだけで作れてしまうなんて。
なんと羨ましい。

家に帰ったら絶対作ろう。

そう心に誓い、取材とゆずの収穫はまだまだ続くのでした。

ゆず大国 高知

取材開始から30分。
竹内さんご家族の息のあった収穫で、足元に広がっていた無数のゆずはあっという間にカゴの中へ。軽トラックの荷台は、ゆずカゴが山積みになっていきます。

かごにたっぷり入ったゆず。

高知県で、ゆず生産が盛んな理由には気候が大きく関係しています。

雨量が比較的多く、特に山間部は朝と夜の寒暖差が大きい。

この高知特有の気候のおかげで、元気なゆずが育つのです。

手際良く枝を切っていきます。

また、高知のゆずが有名になった理由を尋ねてみると、高知県の東側に位置する当時の北川村(現 馬路村)のJA組合長がきっかけだったそう。

当時では珍しかったゆずジュース「ごっくん馬路村」を普及する活動をはじめ、脚光を浴びるようになった。とご主人。

「あの人はすごかった。合併もせずに馬路村として名前が広まっちゅうからね。」

東京のスーパーでも時たま見かけるあのジュース。

小さい頃、母がよく買ってくれたことを思い出しました。なんだか感慨深い。

 そして、1時間という短くも貴重な時間もこれにて終了。

終始穏やかで和気藹々とした雰囲気の中、取材を終えることができほっとひと安心。
竹内さんや小野川さんのほがらかなお人柄に助けていただきました。

最後には、収穫したてのゆずをたっぷりと持たせてくれた奥様。
編集部が珍しいと興奮していた、枝付き葉っぱ付きのものを厳選してくれました。

いただいた立派なゆずは、次の日のうちに皮を刻んで鶏団子鍋にして美味しくいただきました。お出汁もゆずの果汁とお塩のみ。
包丁を入れた途端、果汁と香りが溢れてきて再び農園に戻ったかのようでした。

残りは、購入したしょうがと合わせて煮付けにしようかな。
(お菓子づくりはちょっと苦手なので。)

取材はほとんど受け付けていないという、超多忙な収穫シーズン。
そのような時期に、貴重なお時間をいただき本当にありがとうございました。

これからも香り高い美味しいゆずを楽しみにしています。

TO TOPTOPに戻る